Friday, May 22, 2015

動くには、理由がある - "運動"という意味のcause

ばかみたいに海外出張が多いくせに英語がちっとも上達しないわけですが、正直、もううまくなることはあきらめています。居直りもはなはだしいですが、インタビュー相手には申し訳ないけどこちらのヘタな英語でがまんしてもらうことにしました。だってネイティブじゃないしさー、大きな声で話すこと、ボディランゲージを大げさにやることで、語学力のなさをカバー…されてないんだろうな、きっと(しょんぼり)

ただ、毎日少しずづでも英語に触れていないとほんとうに錆びついてどうしようもなくなってしまうので、仕事のための大量英文記事リーディングのほかに「Duolingo」という語学学習アプリをスマホにいれて寝起きや空き時間にちまちまとやっております。すごくシンプルな例文を20ほど、瞬間的に読む/書く/聞く/話すをひたすら繰り返す。うーん、例文がちょっとシンプルすぎるかなあ、レベルが低いかなあ…と思わないでもないんですが、「へー、英語でこう表現するんだ」という気付きも多くて、けっこう楽しくやっています。まあ、この程度の学習で上達するとは思っていないんですが、やらないよりはかなりマシかなあと。ちなみに現在のレベルは15です。ときどきサボってしまうのですが、フクロウにうながされつつ、細々と続けているかんじですね。

で、昨日のレッスンでこんな和文→英文の問題がありました。
彼らはその運動を支援する。
運動? あーexerciseでいっか、とあまり考えもせず瞬間的に「They support the exercise. 」と書いたわけですが、当然×。うぅ、これだけで筆者のお寒い英語力がおわかりになるかと思いますが…正解は
They support the cause
でした。えー運動ってcauseなの? 原因とか理由じゃないのcauseって!?

こういうときはおなじみの「アルク」に頼るのもいいんですが、英英辞典のサイトで確認するとより理解が深まります。今回はDictionary.comで引いてみたところ、6番目の説明にありました。
a principle, ideal, goal, or movement to which a person or group is dedicated:
the Socialist cause; the human rights cause.
「個人やグループがその身を捧げて取り組んでいる理想やゴール、ムーブメント」という感じでしょうか。何か人を具体的な行動へと突き動かす"理由"がある、だからcauseが"運動"に当てられているのかな…と想像しました。ちなみにアルクにも「support a cause: 大義に資する、運動を支援する」という記載がありました。supportとペアで覚えておいたほうが良さそうですね。

ここまで調べると、もう少し具体的に使われている例を知りたくなってついついGoogle先生のニュース検索でsupport a causeでチェックしてみたところ、ちょうどよい素材がありました。
Brides Against Breast Cancerという乳がんと闘う結婚間近の女性とその家族を支援する団体が、ファンドレイジングで集めたウェディングドレスを格安で販売するというニュースです。乳がんの闘病という苦しいエクスペリエンスを、ウェディングドレスという幸せの象徴のような存在でつつみこむ - たしかにSupport A Good Causeというフレーズにぴったりの運動です。動くべき理由がそこにあるという感じがすごく理解できます。

もう英語が上達することはないと自覚はしていますが、こういうふうに知識がひとつひとつ増えていくプロセスはわりと楽しかったりします。"運動"という意味のcause、そのうち使う機会があるといいのですが。

Tuesday, May 5, 2015

【2015年4月のTop Tweet】はじめにLinusありき - LinuxとGitを生み出したクリエイターの本当のスゴさ

Apple WatchやMicrosoftの技術カンファレンス「build」など、一般ニュースでも話題になるようなネタが多かった2015年4月のIT業界ですが、筆者が発信したトピックで最も高いインプレッション(5,200)を稼いだのはこちらでした。

Linuxカーネルの正式公開はたいてい米国時間で日曜日の午後に行われます。ちょうど筆者がつぶやいている時間帯がLinus Torvaldsの公開準備と重なっていたらしく、ほぼリアルタイムにお伝えすることができました。この手のニュースはやはり速報性が重要ですね。速ければ速いほど、読んでもらえる確率が高くなりますから。

Linux 4.0はそのナンバリングのリニューアル感に加え、待望のライブパッチ機能が実装されるということもあり、リリース前から大きな注目を集めていましたから、このツイートが拡散した理由もわかります。4月はこのほかにもLinux関連のニュースが多かったのでく、それらを簡単に以下の記事の中でまとめてあります。ご興味ある方はお読みいただければ。


さて、Linus関連ではもう一本、非常に関心をもたれたツイートがありました。Gitの10周年を記念して行われたLinusへのインタビューへのリンクなのですが、こちらはインプレッション(4,600)はもとより、エンゲージメントが非常に高かったのが印象的でした。

このインタビューに関してはその後、概要を要約したものを何本か連投したのですが、いずれもたくさん読んでもらえたようです。

LinuxとGitという、ITの世界を根本から変えた2つのイノベーションを生み出したLinus Torvaldsが開発者として優秀であることはいまさら言及するに及ばないでしょう。中にはLinusのことを天才プログラマと呼ぶ人もいます。しかし筆者は、Linusという稀代のクリエイターを"天才"というひとことでくくってしまうことは、逆に彼の能力を過小評価しているようで若干抵抗があります。プログラミングに長けているだけではLinuxはここまでのソフトウェアになりえなかったし、Gitもまた同様だからです。

ではLinusはプログラミング以外にどんな能力がすぐれているのか。私見ですが、Linusは本質を見極める力 - まっすぐに問題の核心に辿り着き、最適な解決策を最短で見つけ出す能力が非常に高いように思えます。たとえばGitのメンテナンスを濱野純氏に任せたことなどはその最たる例でしょう。2年ほど前のあるインタビューで濱野氏はこう答えています。
去年Linus君が受けたインタビュー記事「An Interview With Linus Torvalds | TechCrunch」がありますが、引き継ぎを頼まれた時には、このインタビューの最後の段落で彼が言っているのとほぼ同じコトを言われました。「単にお前が一番たくさんパッチを送ったからではない、お前が他の開発者のパッチをレビューしたり、開発者間の意見の差を調停したりしているのを見ていて、開発者に必要な全体的なセンスが良いと思うから頼むんだ」と。   -- Linus君がボクを後継者に指名した理由 - Gitメンテナー 濱野 純氏」より 
このLinusが指摘した濱野氏のリーダーとしての適性はそのままLinus自身にもあてはまります。濱野氏のような人物の能力を見抜き、その力を信じて任せられるのもLinusの本質を見極める力があればこそだと言えます。カーネル開発においても、Linusは新たに実装する機能やパッチの選び方が非常に的確です。何が重要で、何が不要なのか、その判断がすぐれているからこそ、カーネル開発プロジェクトはコンスタントに進んでいるのではないでしょうか。もっともそのチカラが行き過ぎて、本質とかけ離れたことを言う/やる相手への超ストレートな罵倒になってしまうこともままありますが…。

余談ですが、Debianを最初に作ったファウンダーのIan Murdockがあるインタビューで「Debianに"GNU"なんて付けなければよかった。ストールマン(Richard Stallman)に呼び出されて"お前が作っているLinuxディストリビューションにはGNUの名前を入れろ!"と言われたので仕方なくDebian GNU/Linuxにしたけれど、今となってはすごく後悔している。ダサすぎる」と話しているのをどこかで読んだことがあります。Linusも同じようにストールマンから「GNU/Linuxと名乗れ」と言われたことがあるそうですが、「そんな必要はないから」と華麗にスルーを続けてきました。たとえ権威的存在(当時)からの上意下達でも不要なものは不要といえる強さが、Linuxという世界最大のオープンソースプロジェクトを支えているのだと思います。

もうひとつ、イノベーターとしてのLinusを際立たせているのは、ひとつのことをただひたすらにやり抜く力だと思っています。Linusの講演録やインタビューはいくつも読んできましたが、2011年に来日したときのインタビューにこう答えているものがあります。
「たしかに20年は長いと思う。でも僕は1つのことを集中してやるのが好きなんだ。それにLinuxは単一のプロジェクトというわけではないしね。いろんなプロジェクトがある。それに20年も,経ってみるとそんなに長いわけでもないと思う」 -- [レポート]LinuxCon Japan 2011開幕 Linus Torvalds氏が基調講演「20年間の開発者の労力の先に今がある」より
「カーネルの正式公開は日曜日の午後」と冒頭に書きましたが、正式版のリリースだけではありません。Linusはほぼ毎週日曜日、開発中のリリース候補版を必ず出します。ときには月曜日や火曜日にずれてしまうこともありますが、20年以上に渡ってずっとコツコツと同じ作業を同じスケジュールで続けてきた。これがいかに常人には難しいことか、たいての方はおわかりになるでしょう。ただひたすらにひとつのことを徹底的にやり抜く能力、パッチ当て、デバッグ、テストという地味な作業もいとわず繰り返し繰り返し続ける力、このチカラがLinusに備わっていなかったら、Linuxはこれほどのパワーをもちえなかったはずです。Linux 4.0は大きく注目されてきたリリースでしたが、Linusは一貫して「4.0はそれほど大きなバージョンじゃない」と言い続けてきました。「いつもどおりの作業の結果の、まさに"堅いコードが進化した"リリースだよ」というコメントに、いつもどおりのことをいつもどおりに繰り返せる人だけがもつ強さがにじみ出ています。

Linusは何かのインタビューでLinuxが成功した理由について「運が良かったからじゃないかな」と答えていたことがあります。1990年代はいくつものUNIX系OSが登場しましたが、自分のところが主導権を取ろうといくつもの企業が互いに足を引っ張り合った結果、オープンソースという当時はキワモノ扱いだった開発スタイルのLinuxが最終的な勝者となったいきさつは多くの方がご存知でしょう。でもそれは単にLinusの運が良かったからではないはずです。運が良かったのはむしろ我々のほう、あの時代にLinuxとLinusが登場したことは本当に幸運以外の何物でもないような気がします。

2013年に来日したときのLinus。年々丸くなっているような気もしますが、舌鋒の鋭さはあいかわらずです
おまけ: 残念ながら今年のLinuxConにはLinusは来日しないそうですが、2年前の同イベントでLinusが話した言葉をまとめた記事がこちらです。Linusの魅力の一端が垣間見えるかと思いますので、ご興味ある方はご一読ください。


Friday, April 3, 2015

【2015年3月のTop Tweet】AppleのFoundationDB買収に黙るオープンソース界隈

【お詫び】執筆当初、「FoundationDBをオープンソース企業」と記述していましたが、コア部分のKVSはプロプライエタリライセンスで提供されており、 明らかに筆者の誤解に基づく誤った記述でした。このため、コラムの主旨は変えておりませんが、表記を若干修正しています。混乱させた皆様、大変申し訳ございませんでした。

Sunday, March 15, 2015

「Gigaom」のシャットダウンに寄せて

Gigaomがなくなってしまいました。

正確に言うとGigaomという会社が破産したわけではありません。債務不履行になり、3月9日(米国時間)の営業をもってすべてのオペレーションが不能になってしまったというのが現状のようです。同社のすべての資産は今後債権者の管理下に入ると、マネジメントチームが報告しています。

サイトはまだ存在しており、過去の記事を読むこともまだできるようです。最後に掲載された記事は3/9付けのApple Watchレポートですが、おそらく、もう新しい記事が更新されることはないと思います。同社のスタッフも10日付でほぼ全員「明日からは出社に及ばず」状態になったようで、本当に気の毒としか言いようがありません。

実は筆者は3月18日 - 19日にニューヨークで予定されていたGigaom主催のデータアナリティクスのイベント「Gigaom Data Structure」にプレスとして参加することになっていました。当代きってのデータサイエンティストと言われるヒラリー・メイソンやTwitterのセス・マグワイア、Cloudera CEOのトム・ライリーなどなど、データアナリティクス業界のトップエグゼクティブが一堂に会する機会は米国でもめったにありません。フライトもホテルも自前でしたが、十分にその価値はあるイベントだと確信し、費用もスケジュールもなんとか工面して、「Akiko、前日のVIPレセプションにも招待するからぜひ来てね! Microsoft Azureのマシンラーニングについても話をするから!!」というGigaomからの数日前のメールに気を良くしながら、ニューヨークへと飛ぶ日を待っていた3月10日の午前中に突然届いたGigaomからの「Gigaom is closing its doors」というサブジェクトのメール、そしてシャットダウンのニュースに、ただただ呆然とするしかありませんでした(ちなみにGigaomから連絡が来たときは、ホテルも飛行機もすでにキャンセル不可のタイミングでした)

しかしニューヨークのイベント中止よりも本当につらいのは、自分にとって最愛のメディアであるGigaomがもうなくなってしまうということです。筆者は社会人としてのキャリアのほとんどをテクノロジ系メディアの関係者として過ごしてきましたが、自分がこれまでかかわってきたどの媒体よりもGigaomに対しての思い入れのほうが強いです。とくにフリーランスとして活動するようになってからは、クラウドコンピューティングやビッグデータといった分野を取材の中心にしてきたため、そうしたイノベーションの最新情報を質の高いコンテンツとして提供してくれるGigaomは筆者の毎日に欠かせない存在でした。記事の質、ライターの質、サイトの質、そしてテクノロジとその業界に対するスタンス、etc... Gigaomは筆者がこれまで追いかけてきたテクノロジ系メディアの理想型に近いものでした。いつかメディアを手がけることができるならGigaomのようなサイトを作りたい、その思いはいまも変わりません。そしてサイトだけでなく、同社が主催するイベントも本当にハイクオリティで、筆者はこれまでに2回、サンフランシスコのGigaom Structureに取材に行っていますが、そこで得られた知識と経験の大きさに今でも本当に感謝しています(Structureのレポートはこちらなどを読んでもらえれば)。ああ、きっと今回のニューヨークのイベントもすばらしかったんだろうなあ…(涙)

2014年6月の「Gigaom Structure」のヒトコマ。左はご存知AWSのヴァーナー・ボーガスCTO。Structureには毎年登壇していた。右はGigaomファウンダーのオム・マリク。同氏はこのときすでにGigaomの経営から離れていた

今回のシャットダウンでもうひとつつらいのは、Gigaomのように優秀な記者や編集者を何人も抱えて質の高い記事を日々提供していくスタイルのメディアは、たとえ米国であっても資金的に運営が苦しいという現実をあらためて突きつけられたことです。筆者はフリーランスとして国内の数多くのメディアにお世話になっている身分ですが、どこの出版社/編集部もコンテンツ作成の予算は非常に限られており、そして残念ながら、この状況が今後改善していく見込みがあるとは到底思えません(すいません…)。でも米国にはGigaomのようなクオリティ重視のメディアがビジネスとして成立するのだから、日本でも同じような可能性を模索できるかもしれない - Gigaomのシャットダウンはそんな淡い(甘い)希望もがっつりと断ち切ってくれました。日本だろうと米国だろうと、テクノロジ系メディアの運営はキツくきびしく、儲かる可能性は非常に小さいことに変わりはないのです。

しかし嘆いてばかりもいられません。

すぐれたスタッフを揃えて質の高いコンテンツを毎日提供し、テクノロジベンダやベンチャーキャピタルとも良い関係を築き、読者からも業界からも信頼に足るメディアを作り上げたこと、そしてクラウドやビッグデータ、モバイル、ソーシャルといった最新テクノロジがもたらす可能性の大きさを世の中に伝え続けてきたこと、Gigaomが資金的に詰んでしまったとはいえ、これまで培ってきた同社の功績が否定されるわけではないはずです。「美しく敗けることは恥ではない」というヨハン・クライフの言葉のように、クズみたいなバイラルサイトやキュレーションサイト、まとめサイトがはびこるメディアの世界におもねって生きていくよりも、Gigaomの残したDNAを何かしら受け継ぎつつ"良質なコンテンツ"にこだわった情報発信を苦しみながらでも続けていくほうを選びたい、そのために自分は何ができるのか - 取材旅行のチケットが急遽、季節外れの休暇のチケットに変わってしまいましたが、極寒&豪雪のニューヨークにて、すこし考えをめぐらせてこようと思っています。