Sunday, December 4, 2011

Eucalyptusはオープンなイメージを取り戻せる?


この仕事をしていると「あの人にインタビューしてみたい!」と思うことがよくあって、私の場合、それはLinus Torvalds、Ian Murdock、そしてMorten Mickosになります。LinusもIanも会ったことはあるんですが、単独インタビューの機会はなかったんですよね、残念なことに。Mickosの場合、MySQL CEO時代にインタビューする機会があったんですが、当方の急用でお会いすることができず、いまから考えるとものすごくもったいなかったorz……。

最近はLinus以外の二人、IanとMickosに関してはメディアで名前を聞くことが少なくなって、さびしいなあと思っていたところに、久しぶりにEucalyptus SystemsのCEOとしてMickosの名前をニュース(Eucalyptus CEO: We’re an espresso machine, Amazon is Starbucks | VentureBeat)でハケーン! ちょっと嬉しくなってツイートしたんですが誰も反応してくれないので(苦笑)、もしかして日本だけじゃなくワールドワイドでもあまり注目されてないのかな? と思いぐぐってみましたが、うーん、ちょっと微妙な立ち位置みたいですね、MickosじゃなくてEucalyptusが。

Amazon Web Servicesと互換性が高いプライベートクラウド環境をハイパーバイザを選ばずに構築できるオープンソースという謳い文句で登場したEucalyptusですが、最近はその立ち位置、オープンソースの代表的クラウドプラットフォームという地位をOpenStackにすっかり奪われてしまった感があります。なんといってもUbuntu/CanonicalがUEC(Ubuntu Enterprise Cloud)のベースをEucalyptusからOpenStackに変えてしまったことは、イメージ的にもかなり痛かった出来事だったのではないかと。

もっともMickosはOpenStackと比較されること自体があまり好きじゃないらしく、


  • Eucalyptusの直接のライバルはVMwareのvCloud
  • OpenStackはパブリッククラウド指向であり、プライベート/ハイブリッドクラウド指向のEucalyptusとはそもそも目指す方向が違う
  • OpenStackはAWSに特化していないし、AWS APIをまともにサポートしていない
  • OpenStackが提供するのはツールセット程度。パッケージとして完成されていてアップグレードパスも用意しているEucalyptusと比べることがおかしい


とやや強い感じで否定しています(この記事とか)。おそらくCitrixが7月にCloud.comを買収して以来、ずっと同じコトを聞かれ続けて、うんざりしているのかもしれないですね。

Eucalyptusはオープンソースというよりオープンコアモデルに近い形で提供されています。オープンソースとして誰もが入手できる機能と、お金を払った商用ユーザしか利用できない機能やサービス、この境目がわりとはっきりしているモデルです。たとえばVMwareイメージのコンバートやAmazon EBS用のSANアダプタの提供も商用ユーザに対してだけ行われているので、あんまりOSS的な感じがしないのは仕方ないのかもしれません。あとコミュニティのサポートもあまり活発な感じがしないので、もう少し外部の開発者に対してオープンな姿勢を示していく必要があるんじゃないかなーと余計な心配もちょっと。なんといってもOpenStackは名前に"オープン"が付いているので、すでにその時点で差が付いているしw

エンタープライズの世界はこれからはたぶん、プライベートクラウドとパブリッククラウドの融合が進んでいく方向にあって、プライベートでデプロイした後にワークロードをパブリックにも展開する、パブリックで開発した後にプライベートにデプロイする……という需要が徐々に増えてくるのではないかと思われます。そうなると、ヘテロなプライベートクラウドをパブリックとどう融合させるか、という課題にぶちあたる企業が増えてきて、そうなったときEucalyptusは(現時点ではAWSに特化しているとはいえ)かなり強みが発揮できるはずなんですよ、技術的にもコスト的にも。だからこそクローズドなイメージはいまのうちにできるだけ払拭しておく必要があるのではないかと思います。

まあ、プライベートもパブリックも、クラウド自体の普及がこれからなので、ハイブリッドなんてまだ先かもしれませんが、Eucalyptusは少なくとももうしばらくのあいだは、どこにも買収されずにがんばってほしいです。西海岸のスタートアップが大企業の一部門になるのは悪くない勝利の方程式なんでしょうが、MickosがCEOやっているってこともあるし、願わくばRed Hatのように自分の力で大きくなるOSS系の企業が一社でも増えてほしいなあ…と思っているので。

余談: マイコミ時代の署名記事はあまり紹介したくないんですが(本当はお金払ってでも全部買い取りたい)、MySQLがSunに買収されたときの話をちょこっとだけ書いた記事があったので貼っておきます。ちなみにこの記事のリンク先はほとんど切れているのであしからず。Sunもなくなっちゃったいま、読み返すとかなり複雑な気分になりますが…。