Saturday, June 1, 2013

信念をもって"変わらない"スタイルを貫き通すLinus Torvalds


20年前、スマートフォンもタブレットもまだ世の中に出ておらず、Wintel(Windows + Intel)が幅を利かせていた時代、いったい誰が現在のLinuxの成功を想像できただろうか。フィンランド・ヘルシンキ大学の片隅で生まれた小さなカーネルは、現在、世界のあらゆるデバイス - スーパーコンピュータから組み込み機器に至るまでその勢力を拡大し、気づけば21世紀において世界でもっとも普及しているプラットフォームOSへと成長した。そしてその開発の中心にはいつもこの人 - Linus Torvaldsがいた。

5月30日、2年ぶりに来日したLinusは「LinuxCon Japan 2013」のキーノートでこう語っている。「Linuxにプランなんか最初からなかった。今もとくにない。でも関わっている人たちはそれぞれのプランがある。宇宙ステーションでもロボットでもスマートフォンでも、どんなにそのプランが違っていてもベースとなっているのはLinux、それでいいと思う」

時代にあわせてLinuxにはさまざまな機能が付加され、対応アーキテクチャもi386がなくなりARM関連が増えるなど大きく変わった。また開発のスタイルもLinus自身が生み出したGitをベースにした、プルリクエストによるマージ方式となっている。現在、GitはLinuxだけでなく、他のオープンソースにおける開発の主流となっている。

もっともLinus自身の開発に対するスタイルは20年前から驚くほど変わっていない。カーネルの肥大化を嫌い、パッチはできるだけシンプルなものを求め、インテグレーションの妨げとなる機能追加やユーザランドに影響を与える変更、そして特定のベンダに益する行為は決して認めない。このルールに抵触したメンテナーに対しては、ときにスラング満載の暴言を浴びせることもある。

天才的なコーディング能力と子供っぽさすら感じさせる強い開発者気質。彼が変わらないからこそ、Linuxは進化し続けることができる。だから世界中の開発者/ユーザはLinusをリスペクトし続けるのだ。ITの世界がどんなに変化しようとも、信念をもって変わらないことを選び続ける強さ - 世界を制する人には理由がある。