Phoronixの記事: OpenBSD Foundation At Risk Of Shutting Down
プロジェクトリーダーのTheo de Raadtさんがユーザに寄付を呼びかけております。いちばんの原因は年間2万ドルに上る電気代。うーん、これはなかなか削減できないでしょうね…。
BSD系のOSSプロジェクトはFreeBSDを除いてどこも資金難だと思われます。というか、FreeBSDだって決して潤沢ではなく、寄付の状況などを見るとかなり苦しい台所事情というのが察せられます。いや、BSD系だけじゃないですね。企業のバックアップを受けられないOSSが大きく成長していくということは非常にまれだと思います。
こういう事例を見るにつけ、あらためて企業とオープンソースの関係の難しさを感じさせられます。昨年、インタビューさせていただいたTreasure Dataの開発者でfluentdの生みの親でもある古橋貞之さんは、ご自身の経験を踏まえてこうおっしゃっておられました。
企業がオープンソースのバックに付くことをいろいろいう人もいますが、僕はどんなに良いソフトウェアであっても、やはり企業のバックアップがなければ普及は難しいと思うんです。どんなに良いソフトウェアでも使ってもらえなければ価値はない。これはfluentdの前に「MessagePack」というソフトウェアを作った後、「MessagePackは、ひょっとしてこのまま死んでいくのかな……」と不安になった経験からいえることです。 --「OSや言語ではなくデータベースを極めたい:グリー技術者が聞いた、fluentdの新機能とTreasure Data古橋氏の野心」よりすごく正直で的確な指摘ではないでしょうか。
一方で、企業の支援を得て運営がうまく回っているオープンソースも数多くあります。その代表例がPostgreSQLです。MySQLの対抗馬的な存在として、日本では根強い人気を誇るデータベースですが、その要因は日本でのコミュニティ運営が非常に順調なことが大きい。昨年末、日本のPostgreSQLコミュニティ生みの親ともいえる石井達夫氏にお話を伺う機会がありましたが、そこから一節を紹介します。
──ここでPostgreSQLコミュニティの話を伺わせてください。オープンソースプロジェクトとして,PostgreSQLは比較的長い歴史を誇ります。長く続いた要因としては,MySQLのように1社が開発の主導権を握っているのではなく,多くの開発者が集って開発しているからだと思っているのですが,石井さんはどう見ていますか。
石井:まったくその通りだと思います。ほかのオープンソースプロジェクトもPostgreSQLをお手本にしてほしいですね。そのプロダクトが黎明期のころは1社だけがバックについて開発するというスタイルもありかもしれませんが,ある程度成熟してきたら,ひとつの企業が開発を100%コントロールしようとするべきではない。みんなで開発するというスタイルのほうがより多くのユーザに使われるようになり,コミュニティも発展し,ビジネスとしても伸びていく余地があるように思います。--「[新春特別放談]ニッポンのPostgreSQLコミュニティ生みの親,石井達夫氏が語るPostgreSQLの現在・過去・未来(3)」より
企業がバックにつかないとオープンソースの開発は続かない、しかし1社だけが支配的な状況にあるオープンソースを"オープン"ソースと呼んでいいものか、筆者も石井さん同様、やはりちょっと無理が出てくるんじゃないのと思ってしまいます。こういうとき、Oracleの支配下にあるMySQLはやり玉に上がりやすいのですが、ほかにもHadoopディストリビューションのClouderaが開発元のImpalaなんかも、今後のプロダクト運営をどうするのか、ちょっと気になるところです。ちなみにMySQLに関しては、ファウンダーのMontyことMichael WideniusがいつもボロクソにOracleを叩いており、とくに商用版だけに特別な機能を追加するOracleの姿勢を「オープンソースモデルではなくオープンコアモデル」と激しく批判しています。
話をOpenBSDに戻すと、OpenBSDも毎年、Google先生などから多少なりともドネーションを受けているようですが、おそらく全然足りない状態にあると見られます。OpenSSHやOpenNTPDなどすぐれた派生プロジェクトを生み出してきたプロダクトだけに、このまま活動が停止に追い込まれるのはなんとか防ぎたいものです。PayPalでドネーションを受け付けているようなので、すこしでも集まることを期待しましょう。
この記事を書きながら、カネの集まりやすいOSSとそうでないOSSの違いについて、ふとある仮説を思い立ったのですが、それはまた別の機会にでも。