Saturday, July 20, 2013
Oracle Database 12cが示す5年後のトレンド予測の難しさ
昨年9月に米サンフランシスコで開催された「Oracle OpenWorld 2012」で発表された「Oracle Database 12c」だが、予想以上に検証作業に時間がかかったのか、正式出荷が開始されたのは今週7月17日であった。製品名にクラウドを表す"c"を付け、「クラウドのための最強のデータベース」と謳うオラクル。実際、12cの最大の特徴とされるマルチテナント機能は、複数のユーザ環境が混在するクラウドサービスにおいて、ユーザごとの独立性/分離性を保ちながら、利便性も集約性も損ねないとしている。
もっともオラクルCEOのラリー・エリソン(Larry Ellison)はもともとデータベースにマルチテナント機能を実装することに反対だったと昨年のOOWで語っている。マルチテナントはユーザのデータを危険に晒す、ずっとそう思い続けてきたが、開発チームからそのアーキテクチャの詳細を説明され、ようやく納得したという。ラリーに限らず、マルチテナントに嫌悪感を示すある年代以上のIT関係者は少なくない。SAP創業者のハッソ・プラットナー(Hasso Platner)もマルチテナントには懐疑的だったとされており、かわりにインメモリですべてのデータ処理を行うデータベース「SAP HANA」を考案するに至っている。
マルチテナントを嫌がるというのは、クラウドを嫌がると同義と言ってもいい。おそらくラリー・エリソンという人はクラウドを認めたくない気持ちがいまもあるのではないかと思えてならない。
この写真は2008年9月に行われたOracle OpenWorldで、ラリー・エリソン自身が初代Exadataを華々しく紹介したときのものである。Sun Microsystemsを買収する前でもあり、ハードウェアはHPによって提供された。ちなみに当時のHPのCEOは、現オラクルのプレジデントであるマーク・ハード(Mark Hurd)である。ずっとハードウェアを欲していたラリーとオラクルにとって、この初代Exadataの誕生がどれほど誇らしいものだったか、容易に想像がつく。当時、クラウドコンピューティングという言葉がバズワード化しかけていたが、ラリーはトレンドの動向よりも、ハードウェアを含むオラクルブランドの垂直統合化に熱中しはじめた。
もし、当時からオラクルがクラウドに対して全力で投資を行っていたなら、クラウド業界の勢力図はもう少し現在と違ったものになっていたかもしれない。5年後、フラグシップ製品のデータベースに12cと名付けたオラクルだが、その"cの世界"でのオラクルの存在感は同社がアピールするほど大きくない。5年先を見据えてビジネスを展開するというのは本当に難しい。